6月4日〜10日は、歯と口の健康週間です。口の健康は、体の健康ともつながっています。今回は、口の機能の低下「オーラルフレイル」についてお伝えします。
オーラルフレイルとは
オーラルフレイルとは、口の機能低下や食べる機能の障害を引き起こすことになる体の衰えの一つ。口の機能が、健康と低下の間にある「口の虚弱」状態を意味します。例えば、硬いものが噛めない、飲み込む力が弱い、むせてしまうなどの口の機能の軽微な衰えから、だんだんと食べられる食材の種類が減り、食事バランスの偏りにつながってしまいます。気持ちのうえでも食事を食べる楽しみが減って食欲低下を招き、低栄養になります。そのような状態が続くことで、全身の筋力や体力の低下を招き、やがて寝たきりになるなど介護を要する負のスパイラルへと進んでいきます。
オーラルフレイルチェック
口の衰えは気づきにくいため、いつの間にかオーラルフレイルを加速させてしまいがちです。早期にご自身のオーラルフレイルの兆候を知るために、下記セルフチェックリストをご確認ください。
・半年前に比べて、硬い物が食べにくくなった
・お茶や汁物でむせることがある
・義歯を入れている
・口の乾きが気になる
・半年前と比べて、外出が少なくなった
・さきイカ・たくあんくらいの硬さの食べ物を噛むことができない
思い当たる方は、早速、予防対策を講じましょう。
オーラルフレイルを予防するには…
オーラルフレイルを予防するには、まず、噛む力を衰えさせないこと。そのためには、よく噛んで食べること、口の軽微な衰えを見逃さないこと、かかりつけの歯科医を持ち、口の中をこまめにチェックしてもらうなど、日ごろからオーラルケアを心がけること。そのうえで、バランスのよい食事を摂ることも大切です。
よく噛んで食べることができる工夫
噛む力をつけるために、調理面などでもできる工夫があります。
- 食材は大きめに切る
食材を大きく切ることで、噛む回数が増えます。食材が小さいとよく噛まずに飲み込んでしまいます。
- 歯応えを残して調理
食材は、くたくたにやわらかく煮すぎると歯応えがなくなってしまいます。すると、よく噛まずに飲み込んでしまいます。歯応えもおいしさの一つ。食中毒の心配のない食材は加熱しすぎないように。生で食べられる食材は、歯応えを楽しんで、よく噛みましょう。
- 歯応えのある食材を使う
硬いものや繊維質のもの、弾力のある食材には歯応えがあります。例えば、ごぼうやれんこん、たけのこは硬くて、繊維質が多く、海藻やきのこなどは食物繊維が豊富、こんにゃくやタコなどは弾力性に富み、歯ざわりが魅力的な食材です。ご飯も、白米より玄米や雑穀にすると、歯応えや食感を楽しみながら自然と噛む回数が増えます。ハンバーグやつくねなどを作るときも、れんこんや人参などを入れて歯応えをプラスするといいでしょう。
- ”ながら”食いをしない
テレビやスマホを見ながら食事をすると、噛むことに集中できません。食べ過ぎてしまう可能性もあります。食べることに集中するのも大事です。
- 口いっぱい食べ物を詰め込まない
口いっぱいに食べ物を詰め込んでしまうと、よく噛めません。いい加減に噛んだところで、飲み込んでしまいがちです。口に入れる量は少なめにして、噛む回数を増やしましょう。
- ひと口ごとに箸を置く
ひと口食べたら、箸を置くようにすると、早食い防止になり、自ずと噛む時間を長めにとることができます。
よく噛んで食べることで、噛む力を衰えさせずにすむばかりでなく、満腹中枢を刺激して食べる量を抑えることができるので、肥満予防にもつながります。また、細かく噛み砕くことで唾液の分泌も盛んになり、唾液に含まれている消化酵素のおかげで胃腸への負担をやわらげます。唾液には抗菌作用があるため、お口の清掃効果も高まります。口の健康は体の健康につながります。ぜひ一度、健口チェック(https://www.jda.or.jp/kenkou-check/)してみてください。
【参考文献】
・日本歯科医師会「オーラルフレイル」
https://www.jda.or.jp/oral_frail/
ライター:山下 真澄
管理栄養士|日本スポーツ協会公認スポーツ栄養士|
食育インストラクター|一級惣菜管理士|調理師