前回は肥満と肥満症についてお伝えしました。今回は、肥満とサルコペニアが合併した病態であるサルコペニア肥満についてお伝えします。
サルコペニアとは?
サルコペニアとは、ギリシャ語で筋肉を意味する「sarco(サルコ)」と喪失を意味する「penia(ペニア)」を合わせた造語。加齢に伴い筋肉量が減少して、筋力や身体機能が低下している状態のことで「加齢性筋肉減弱現象」などと呼ばれます。25〜30歳ごろから進行が始まり、生涯を通して進行していきます。
サルコペニアの原因は?
サルコペニアには、2つ要因があり、加齢に伴う筋肉量の低下が原因の1次性サルコペニアと、活動や疾患、栄養が原因の2次性サルコペニアに分類されます。
年齢とともに、筋肉量は減少していく傾向があり、60歳を越えると減少量は加速します。さらに身体機能が低下することで食事量も減り、筋肉の材料となるたんぱく質の量が不足します。その結果、筋肉をつくることができず、筋肉量が減少してしまいます。筋肉量の減少は、立ち上がりや歩行などの基本的な動作に影響を及ぼし、転倒しやすくなったり寝たきりなどの要介護状態になったりします。
2次性サルコペニアは、寝たきり・長期の安静状態といった活動量の低い生活に関連するもの、疾患に関連するもの、エネルギー・たんぱく質不足など栄養に関連するものに分けられています。そのため、2次性に関しては年齢とは関係なく若い方でもなる可能性を秘めています。
サルコペニア肥満は危険
サルコペニアは筋肉量の減少で起こるため、肥満とは関係ないというイメージがあるかもしれません。しかし、近年、筋肉量の減少と肥満が重なった「サルコペニア肥満」が危惧されるようになりました。サルコペニア肥満は、俗に「隠れ肥満」ともいわれ、筋肉量が減って体脂肪、特に内臓脂肪が増えている肥満のことをいいます。見た目やBMIは普通なので肥満と気づきにくいのですが、体脂肪検査をするとわかります。年齢が上がるとともに増え、特に女性のほうがなりやすいといわれています。
サルコペニア肥満は、普通の肥満に比べて生活習慣病などになりやすいといわれます。筋肉量の減少による運動機能の低下で、寝たきりになるリスクや認知症になる恐れ、さらには免疫力の低下や生活習慣病から心臓や脳の病気を招きやすくなるなど、さまざまな病気につながる危険性をはらんでいます。
運動不足と食生活の乱れは禁物
サルコペニア肥満の原因として、加齢以外に運動不足と食生活の乱れが挙げられます。
運動不足では筋肉量が低下して代謝が落ち、脂肪がつきやすくなります。また、運動不足で食べたものを十分に消費することができないと脂肪を溜め込みやすくなってしまいます。
食生活では、無理なダイエットや欠食、偏った食事などでバランスよく栄養を摂ることができないと、栄養素が上手に機能しないため、脂肪がつきやすくなります。
一時期、炭水化物ダイエットが流行しましたが、極端に炭水化物を摂らないでいると筋肉量の低下につながってしまいます。炭水化物は体を動かすエネルギー源です。そのエネルギー源が不足すると、体の構成成分であるたんぱく質や体に蓄えてある脂肪や筋肉を分解してエネルギーとして使うことになります。このとき、一時的に体重が減り、脂肪が落ちたと思われがちですが、筋肉量も減ってしまい、代謝が落ち、逆に脂肪がつきやすくなってしまいます。このたんぱく質が過度に分解されると、本来筋肉となるたんぱく質の役割を果たすことができません。
筋肉をつけるためには、筋肉の材料を摂る必要がありますが、材料を摂るだけでは筋肉はつきません。材料を摂り、筋肉を動かし、刺激を与えること。日ごろから運動をして体を動かし、1日3食、主食・主菜・副菜が揃うようにバランスのよい食事を心がけてください。
痩せているからとか適正体重だから大丈夫と安心してはいけません。体脂肪も意識しながら、運動と食事に気をつけてサルコペニア肥満を予防しましょう。
【参考文献等】
・e-ヘルスネット「サルコペニア」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-087.html
・アクティブシニア「食と栄養」研究会
https://activesenior-f-and-n.com/sarcopenia/obesity.html
ライター:山下 真澄
管理栄養士|日本スポーツ協会公認スポーツ栄養士|
食育インストラクター|一級惣菜管理士|調理師