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ビタミンの種類と働き⑤
2024.05.10 おすすめ記事

ビタミンの種類と働き⑤

ビタミンについての5回目は、ビタミンB群のうち、パントテン酸、ビオチンの2つとビタミンCについてお伝えします。 

【パントテン酸】 

 パントテンとはギリシャ語で「どこにでもある」という意味。その名の通り、パントテン酸は食品に広く存在するビタミンです。糖質や脂質、たんぱく質の代謝とエネルギーを産生するときに大切な役割を果たしています。そのほかに、免疫抗体やホルモンの合成、自律神経の働きの維持、善玉コレステロール(HDLコレステロール)を増やすなどさまざまな働きがあります。ストレスを和らげる働きがある副腎皮質ホルモンの合成にも関わっているため、「抗ストレスビタミン」ともいわれています。 

 パントテン酸はさまざまな食品に含まれているため、通常の食事をしていれば不足する心配はありません。しかし、極端に偏っている食生活や欠食などで不足した場合は、疲れ、頭痛、めまい、動悸、不眠、食欲不振などの症状があらわれる可能性があります。ストレスに対する抵抗力も弱まってしまいます。さまざまな食品に含まれているからといって油断せずに、規則正しい食生活を心がけましょう。過剰摂取による体への影響はほとんどないといわれています。 

 パントテン酸を多く含む食品として、鶏肉や魚、大豆製品、乳製品、きのこ類などがあげられます。酸やアルカリの存在下では熱に弱いため、調理方法に注意が必要です。また、アルコールやコーヒーなどのカフェインはパントテン酸の吸収を阻害してしまうため、食べ合わせには気をつけましょう。 

◎パントテン酸を多く含む食品 

鶏レバー、鶏ささみ、鮭、うなぎ、ししゃも、納豆、きな粉、チーズ、牛乳、乾燥しいたけ ブロッコリー、トマト など 

【ビオチン】 

 ビオチンは糖質や脂質、たんぱく質の代謝をサポートしているビタミンです。特に、皮膚や粘膜、爪、髪の毛を健康に保つ大事な役割をしています。また、ビオチンは抗炎症物質をつくり出し、皮膚の炎症を予防するため、アレルギー症状を緩和する働きがあります。 

 ビオチンはさまざまな食品に含まれており、腸内細菌によっても合成されるため、通常の食事をしていれば不足する心配はありません。不足した場合はリウマチやクローン病など免疫不全症や、インスリンの分泌低下により糖尿病のリスクが高まります。また、皮膚に関係しているため、皮膚炎や結膜炎、白髪、脱毛、舌炎などを引き起こす可能性があります。過剰摂取に関しては尿中に排泄されるため、これまでに体への影響が出たという報告はありません。ただし、妊娠中のビオチンの過剰摂取は、胎盤や卵巣の萎縮の可能性があるという報告があります。 

 ビオチンを多く含む食品としては、レバー、卵、きのこ類などがあげられます。水溶性ビタミンなので水には溶け出しやすいものの、熱や酸、光には強いので調理による損失は少ない栄養素です。ただし、生の卵白を多く摂取した場合は、卵白中のアビジンという物質がビオチンと結合し、ビオチンの吸収を妨げてしまいます。ただ、極端に大量の生卵白を長期にわたって食べない限り心配はなく、また加熱することでアビジンは活性が弱まり、影響を抑えることができます。 

◎ビオチンを多く含む食品 

鶏レバー、卵、乾燥しいたけ、きくらげ、まいたけ、落花生、あさり、かれい など 

【ビタミンC】 

 ビタミンCは体の調子を整えてくれる栄養素で、皮膚や粘膜の健康維持、抗酸化作用、鉄の吸収促進、免疫機能の維持、疲労回復など多岐にわたる働きをしています。特にコラーゲンの合成に必要不可欠です。コラーゲンは、皮膚や髪の毛などを構成するたんぱく質で、その働きは、皮膚や粘膜、髪の毛などの健康維持、血管の柔軟性を保つなどさまざまです。 

ビタミンCの働きのなかで注目すべき点として、抗酸化作用があります。抗酸化作用とは活性酸素から体を守ることで、老化や動脈硬化、がんの予防などが期待できるといわれています。鉄の吸収もサポートしているので、貧血の方や貧血予防のためには鉄と一緒に摂ってほしい栄養素です。特に吸収率が低い非ヘム鉄(ほうれん草や海藻などの植物性食品に多く含まれている)と一緒に摂ると吸収率を高めることができます。 

 ビタミンCが不足するとコラーゲンが上手に合成できず、血管が脆くなり歯肉から出血しやすくなったり、出血が止まらなくなる「壊血病」になったりします。ほかに、貧血や疲労感、食欲不振、免疫力の低下などの症状が起こりやすくなります。ビタミンCはストレスが多いとどんどん消費されてしまいます。また、喫煙者やウイルスなどに感染しているときは必要量が高まり、不足しやすくなります。食事による過剰摂取の心配はほとんどありませんが、サプリメントなどで過剰に摂取した場合は、下痢や吐き気、腹痛を生じる場合があります。 

 ビタミンCは体の中で合成できないため、必ず食事で摂取しなければなりません。ビタミンCを多く含む食品として、野菜や果物はよく知られていますが、実は、いも類にも多く含まれています。水に溶け出す水溶性ビタミンで、熱に弱いため、サラダなど生で食べるのがおすすめですが、いも類に関しては、でんぷんがビタミンCを保護してくれるため、加熱調理後も分解されずに残るのが特徴です。 

◎ビタミンCを多く含む食品 

カラーピーマン、パプリカ、カリフラワー、ルッコラ、キャベツ、ブロッコリー、さつまいも、じゃがいも、いちご、キウイフルーツ、みかん など 

次回は、今までお伝えしてきたビタミンを、どのくらい摂取すればいいかについてお伝えします。 

【参考文献】 

・e-ヘルスネット「ビタミン」 

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-027.html

・国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 

https://hfnet.nibiohn.go.jp/vitamin/detail180/

ライター:山下 真澄

管理栄養士|日本スポーツ協会公認スポーツ栄養士|
食育インストラクター|一級惣菜管理士|調理師