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脂肪の役割は? 体脂肪とは?
2023.07.11 レシピ

脂肪の役割は? 体脂肪とは?

暑くなって薄着になると、ため込んだ脂肪が気になる人も多いことと思います。栄養学の世界では脂質としておなじみですが、脂肪は脂質の一種。肉の脂身などに含まれる中性脂肪や内臓脂肪などは何かと悪もの扱いされがちですが、生きていくためには必要な役割も果たしています。今回は脂肪についてお話しします。

脂肪の役割

脂肪は体を動かすエネルギー源としてはもちろんですが、下記のような役割があります!

・エネルギーの貯蔵庫
・体温保持
・ホルモンを作る
・骨や筋肉、内臓などの臓器を保護

脂肪は女性ホルモンとも深い関係があり、月経・妊娠・出産に必要不可欠です。

体脂肪とは?

人間の体は図1のとおり「水分・タンパク質・脂質・ミネラル」の主要成分で構成されており、体脂肪と骨、除脂肪軟組織の3要素に分類されます。この体組成のバランスが崩れると、肥満や脂質異常、栄養失調などになりやすく、その結果さまざまな病気を招きやすくなります。

「体脂肪」は、体内に蓄積された脂肪のことで、皮下脂肪と内臓脂肪に分けられますが、この2つ以外に、第3の脂肪として「異所性脂肪」が注目されています。

(図1)人の体を構成する成分

皮下脂肪

皮下脂肪とは、その名のとおり皮膚の下についた脂肪のこと。特に、お腹、お尻、太ももなど、日ごろあまり動かさない部位にゆっくり蓄積していって、落ちにくいのが特徴です。体温保持機能があり、外部の刺激から臓器を守っています。女性ホルモンの働きにより、男性より女性のほうが蓄積しやすいという特徴もあります。 皮下脂肪が多くなる原因としては運動不足、エネルギーの過剰摂取が挙げられ、皮下脂肪型肥満になると、睡眠時無呼吸症候群・関節痛・月経異常を招きやすくなります。

内臓脂肪

内臓脂肪とは、お腹を中心とした内臓のまわりに蓄積した脂肪のこと。そのため、内臓脂肪型肥満では、お腹がぽっこり出るリンゴ型肥満になります。男性に多く、短期間で蓄積しやすい半面、運動や食事で落としやすいという特徴があります。内臓脂肪が多くなる原因として、飲酒、食生活の乱れ、食べすぎ、早食いなどが挙げられ、メタボリックシンドロームや糖尿病、動脈硬化などを招きやすくなります。

 特定健診の検査項目の一つに腹囲の測定があります。これは、内臓脂肪が蓄積しているかどうかを確認する目安になります。男性は腹囲85cm以上、女性は90cm以上になると、内臓脂肪の断面積100㎠に相当し、内臓脂肪が多いということになります。 上記に相当する内臓脂肪の蓄積があり、かつ血圧・血糖・脂質の検査数値3つのうち2つ以上が基準値を超えると、メタボリックシンドロームと診断されます。毎年健康診断を受け、数値をチェックしなhがら、常日頃より食生活を見直してみましょう!

異所性脂肪

異所性脂肪とは、皮下脂肪・内臓脂肪の脂肪組織に入りきらなかった脂肪が、本来たまるはずのないところ(臓器、筋肉など)に蓄積されたものをさします。一定レベルを超えると、内臓脂肪同様に、メタボリックシンドロームや糖尿病、動脈硬化などを招きやすくなります。

体脂肪が増えすぎても減りすぎてもNG!

体脂肪が増える原因としては、食事の乱れ、食べすぎ・飲みすぎ、糖質の多い食事、運動不足などが挙げられます。このような生活を繰り返していると肥満、糖尿病や高血圧、脂質異常症を招き、いずれは脳梗塞や心筋梗塞を起こし、寝たきりに……となりかねません。

「最近、昔と食べる量が変わらないのに、お腹まわりが大きくなった気がする……」という方はいませんか? 脂肪は、年齢とともに増加しやすくなります。加齢に伴い筋肉量が低下するため、代謝が落ち、脂肪がつきやすくなるのです。基礎代謝量のピークは、男性が15〜17歳、女性が12〜14歳で、その後は減少していきます。加齢のせいにせず、筋肉量が増えるよう、運動をし、食事に気をつけて、基礎代謝をアップさせましょう!

ただし、体脂肪は減らせば減らすほどいいというものでもありません。人間には、体温保持やホルモンの働きなどの生理機能を正常に維持するために必要な最低限の脂肪量があります。それは体脂肪率にすると、男性で3%、女性で12%前後といわれています。それを下回ると生理機能に異常が出てしまいます。

女性アスリートに多いのですが、体型を維持する必要のある競技の選手などは、体重、体脂肪を落としすぎてしまいがちです。体脂肪が低すぎると、視床下部の働きが乱れ、女性ホルモンの分泌が止まります。すると排卵が起こらず、無月経や月経不順などを招き、疲労骨折、骨粗鬆症や免疫力の低下などにつながります。

最近の女性は痩せ願望の傾向が強いので、無理なダイエット、パフォーマンス向上のために脂肪をどんどん落としてしまう方は注意が必要です。

脂肪は大切な役割をしていますが、量次第では体に悪い影響を及ぼします。次回はそのあたりの食事のポイントをお伝えします。

ライター:山下 真澄

管理栄養士|日本スポーツ協会公認スポーツ栄養士|
食育インストラクター|一級惣菜管理士|調理師

【出典】

・(書籍)楽しくわかる栄養学(羊土社)中村丁次/著

・e-ヘルスネット

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-089.html

・日本人の食事摂取基準(2020年版)

総論 脂質

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-089.html

 各論 1エネルギー・栄養素

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-089.html