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排塩!減塩!ナトリウムの賢いコントロール方法
2022.09.19 おすすめ記事

排塩!減塩!ナトリウムの賢いコントロール方法

日本人の平均的な塩分摂取量は男性10.9g、女性9.3g(※1)で、1日の塩分摂取の目標値男性7.5g未満、女性6.5g未満(※2)にはまだまだ程遠い現状があります。食塩の摂り過ぎは、高血圧や胃がんの発症要因になることがわかっています。高血圧は、そのまま放置すると脳卒中や心不全などの命にかかわる疾患を引き起こす場合もあるので軽視してはいけません。しかし、日本の高血圧人口は4300万人いると推定され、日本人のおよそ3人に1人が高血圧なのです。

体には体内の塩分濃度を一定に保つ働きがあり、塩分を取り過ぎると、濃度を薄めようと体内に水分が増え、血液量が増加します。その結果、血圧が上昇します。塩分とは塩化ナトリムという物質のことで、血圧上昇に関わるのはナトリウムです。しかし、ナトリウムは人にとって欠かせないミネラルのひとつなので、適切な摂取を心がけていく必要があります。

いま血圧が高くない方でもナトリウムの賢いコントロール方法を身につけることは大切です。加齢とともにナトリウム排出機能が衰え、同じ味の濃さを長年続けているといずれ体の機能が追いついてこなくなる可能性もあります。日本は先進国の中でも塩分摂取量は高い方。その理由は、和食のメニューには塩分が高いものがあったり食の欧米化もあって身近な料理は塩分過多なのです。未来の自分や家族の健康を守っていくために始めていきましょう。

ナトリウムの賢いコントロール方法とは

 ” 排塩 + 減塩 ”

国民健康・栄養調査より、日本人の塩分摂取の約2/3は調味料から摂取していました。味付けを薄くする心掛けは必須ですが、いきなり普段より味の薄い生活が始まっても、食事の楽しみがなくなってしまいます。そこで視点を変えて、ナトリウムの排出を促す3つのミネラルを積極的に摂取する食事をまず心掛けてみてください。この食生活を取り入れられるようになってきたら、次に減塩を意識した味付けを心掛けていきましょう。美味しい減塩調理の工夫も色々あるのでご紹介していきます。

排塩を心掛けた食事

ナトリウムの排出を促すのに、次の3つのミネラルがあります。この3つのミネラルを多く含む食品は、大豆製品、乳製品、バナナ、アボカド、ブロッコリー、にんじん、アーモンド、いわし、しらす干しなどがあります。

カリウム
ナトリウムを排出するミネラルの代表格です。カリウムを多く含むのは野菜、芋類、果物、海藻、豆類など。調理の際の注意点は、カリウムは水溶性のため、茹でると溶け出してしまいます。なので、茹でるよりは電子レンジ調理したり、味噌汁などに入れて汁ごと食べるメニューにするのがおすすめです。汁物の塩分は一般的に高めですが、具沢山にして汁を減らすなど工夫すれば大丈夫といわれています。
ただし、カリウムは腎機能が低下している人が摂り過ぎると、高カリウム血症になる心配があるので注意しましょう。

カルシウム
カルシウムは、カリウムとマグネシウムと食物繊維とともに摂取すると相乗効果がうまれ血圧を下げると言われています。塩分摂取量が多すぎると骨ももろくなりやすいので、排出を促すことに加え、骨量を守るためにも必須なミネラルです。牛乳や乳製品、大豆製品、ごま、小魚などから摂れます。

マグネシウム
マグネシウムはカルシウムの働きをバランスよく調整し、血管を広げ血圧を下げる働きがあるといわれています。塩分排出だけでなく、貧血予防や、血流をよくする効果も期待できます。海苔やわかめなどの海藻類、大豆製品、玄米や雑穀、貝類、アーモンドやカシューナッツなどのナッツ類などに含まれています。

近年の日本では、日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン」にも掲載された、降圧のための食事療法のひとつである“DASH食”+減塩が、高血圧予防としても注目されています。こちらは別の機会にご紹介します。

美味しく減塩の工夫

出汁をきかせる
かつお節や昆布、煮干などからとった出汁のうま味を活用することは、美味しく減塩できる大事なコツのひとつです。汁物や煮物にしっかり出汁をきかせると、自然と食塩は必要としなくなるでしょう。ただし、市販の出汁の素には原材料に食塩が使われているものが多くありますので、原材料に食塩が使われていないものを選んでください。

にんにくと生姜でパンチをつける
炒め物の減塩工夫には、刻んだにんにくを油でじっくり熱して香りが立ってから炒め物を作ると、味にパンチが出て調味料を減らすことに繋がります。料理によっては刻み生姜もにんにくと一緒に使うとよいです。スパゲッティのソース作りでは欠かせないにんにく油は、色々なソースの味の底上げをして出汁のような役割をしています。もちろん入れ過ぎはにんにくの香りや味が際立ってしまうのでお好みで調整してください。実際にこの方法を保育園で取り入れているところもあります。

スパイスでアクセント付け、もしくは隠し味
どんなレシピにも塩とコショウは定番の味付けですが、塩を減らしてコショウを多めに入れたり、お気に入りのスパイスを使い香りや味にアクセントをつけて、塩味以外の味付けを楽しみましょう。カレー粉は複数のスパイスがミックスされているので香りや味のパンチは強く、減塩にうってつけです。その他オススメなのはチリペッパー。口に入れてすぐ辛味を感じる特徴をいかして、塩を控えた炒め物に隠し味程度に一振り入れてみると塩味が強くなったように感じるでしょう。

酸味を利用する
酢やレモン汁などの柑橘系の酸味で味付けに変化をつけましょう。また味が気持ち足りないと感じた時に、隠し味程度に少量酢を加えてみると物足りなさがカバーできることもあります。酢の酸味が塩味を助長してくれるはずです。

薬味をふんだんに使う
ねぎ、生姜、青じそ、ごま、みょうが、パセリ、木の芽、みつば、にんにくなどの薬味は、料理の飾りとしても映える上、その強い香りが脳に刺激を与えるため薄味でも満足しやすくなります。ごまは、炒りごまにすると香り立ちの高さから薄味でも美味しく感じられます。

仕上げに調味料
炒め物や焼き物の場合は、料理が出来上がる直前に醤油や味噌や塩などの調味料を入れると、食材表面に塩分がついて、舌にのせた瞬間に塩味を感じられるので、減塩に有効です。煮物は中まで味がしっかり染みたほうが美味しいですが、例えば出汁とレシピの半分量の調味料で煮て、仕上げに残りの調味料を半分残す気持ちで加えて調整してみてください。

参考
(※1)厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査結果」
(※2)厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」